おまえが失ったものを/取り返そうなどと考えてはいけない/かなしみは/失われたものにあるのではなく/奪われたおまえにあるのだから
おまえが失ったものは/たかだか給料の半年分ほどだと/やつらは計算し/いつでも返せる気でいる/だからもう/取り返すことなどできはしない
おまえが失ったものは/「たとえば狐の皮ごろも」/たとえばいたちの隠れ蓑/であったとしても/奪われてしまったおまえのかなしみは/消えはしないだろう
カシオペアが何百回と回転し/白鳥が何千回と/西のそらに沈んでいっても/もう/取り返すことはできない
だが/おまえの肩をゆさぶりながら/おれに言わせてくれ
そんなかなしみを抱いている/おまえにできることは/失ったものを取り返すことではない/やつらからおまえを取り戻すことではない
おまえが/やつらのいる世界をやめさせられないかと/言っているのだ
おまえが 知らなかったおまえを/未来に描き出すことはできないかと/おまえの震える背中に向かって言っているのだ
おまえは/おれと/旅立たないか
あそこの/まとまった名前などない土地に行き/打ち棄てられたモミを拾い集めて/ゆがんだ麦を/植えてみないか
(野毛 一起「那須地人協会設立趣意書・終章」より)
"(masmtから)